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研究:モニタリング・メインテナンス

レーザードップラー速度計による高度モニタリングシステムの構築

近年,社会基盤施設の経年劣化に伴う事故が多発している.そのため構造物の健全性を定量的かつ客観的に評価することが可能な構造ヘルスモニタリングシステムの構築が重要である.これまでに,橋梁研究室では,高精度かつ長距離・非接触多点計測が可能なレーザードップラー速度計(LDV)を用いたモニタリングシステムの構築を進めてきた.

 本研究では,既存のシステムを発展させて,LDVによる「高度」モニタリングシステムの構築を行う.具体的には,3台の多点計測可能なLDVを柔軟に組み合わせて,構造物を高精度かつ高密度にモニタリングするシステムの構築を行う. 本年度(2005年度)は,(1)列車が高速走行する鋼鉄道橋のモニタリングおよび(2)LDVによる三次元振動計測システムの構築を進めた.
 (1)では,常時微動計測および列車走行時振動計測をウェブおよび下フランジについて行った.その結果,常時微動計測から,下フランジ3断面について補強材を取り付ける前後での振動モード形の変化を確認することができた.また,列車走行時振動計測からは,列車走行時の非定常な振動現象について,知見が得られつつある.
 (2)では,振動する物体に対し,三方向からレーザーを照射させて,三次元振動計測を行う手法の構築を進めている.本手法では,スキャニングシステムを利用することで,多点についての三次元振動計測を行うことが可能である.初めに,屋内実験でLDVによる三次元振動計測の原理を確認した.次いで,鋼鉄道橋において,列車が走行するときに,三次元振動計測を行い,本手法が有効であることを確認した.今後は,現場計測により即した柔軟性の高い三次元振動計測システムの構築を進める.



1)LDVによる鋼鉄道橋のモニタリング関連 2)LDVによる三次元計測関連

レーザードップラー速度計(LDV)とトータルステーション(TS)を用いた遠隔的自動振動計測システムの構築

吊形式橋梁ケーブルの健全状態は、通常、加速度計を用いてケーブル振動数を計測し、そこからの固有振動数をもとに判断しています。しかし、この方法では、数多くあるケーブル材一本ごとに加速度計を設置し、専用ケーブルを接続・配線した後、増幅器やPC などの計測機器を現場に設置しなければならず、それらの設置の多くは高所・危険作業を伴います。

このような問題を解決するため、レーザードップラー速度計(以下LDV)とトータルステーション(以下TS)を組み合わせた、非接触式の多点振動システムを開発しました。LDVは、レーザー光を物体に照射し、その照射光と反射光との周波数差から速度を検出する光学式干渉計で、 速度の分解能が非常に高く(0.1μm)、非接触かつ遠距離の振動計測が可能です。これにTSを組み合わせることにより、遠距離にある計測ポイントのレーザーの照射状況を視準し確認することが出来る上、位置情報を3次元座標値で記憶させることができます。また、TSの自動追尾機能により、−90度〜+90度の広範囲にわたって、計測ポイントを自動的かつ連続的にモニタリングすることが可能となります。

工兵橋(広島市、支間長:約80m)における振動計測実験では、LDV の計測位置から約80m先にあるハンガーロープの計測を行いました。実験では、LDVにより非接触計測を行うとともに、加速度計によっても計測し、その結果を比較しました。その結果、加速度計とLDV により同定されたハンガーロープの固有振動数は、ほぼ一致しました。

この実験では、80m先のケーブル振動計測が可能であることが実証されましたが、現在、長大橋(多々羅大橋、最長計測距離970m)においても、検証が終了し成果をとりまとめています(PDFファイル参照)。また、鋼板を用いた基礎実験においては、2km遠方にある鋼板の固有振動数を計測できることを確認しています。今後は、その実用化に向けた更なるシステム開発、および他の構造物への適用を検討していきます。なお、本研究は(株)計測リサーチコンサルタント及び長岡技術科学大学 宮下助教・との共同研究です。本研究は平成17年度(財)先端建設技術センター研究開発助成により研究を実施しました。


軌道モニタリングシステムの開発

鉄道,特に経営状態の厳しい中小鉄道では,限られた予算の中で日常の安全性を確保するとともに,老朽化が進む鉄道施設の維持管理を適切に行っていく必要がある.このような背景から,主に中小鉄道を対象として,営業列車に設置可能で低コストである軌道モニタリングシステムの開発を進めている.

計測システムは,列車の振動を測定する加速度センサと位置情報を得るためのGPSセンサから構成される.得られた加速度データに,車両モデルの運動方程式により求めた周波数応答関数の逆関数を乗じることにより,軌道狂い量を推定することが可能となる.本手法の妥当性は実地試験により検証されており,今後,実用化に向けた開発を進めていく予定である.

 

道路高速診断システムVehicle Intelligent Monitoring System(VIMS)の開発

わが国の高速道路では維持管理の重要性が増している.車両から直接荷重を受ける舗装路面・伸縮装置はダメージを受けやすく、それが車両の走行性、安全性に大きな影響を与える.舗装・伸縮装置の劣化や不具合により高速道路ユーザーが引き起こす事故や沿道住民への騒音を未然に防ぐためには、舗装・伸縮装置の状態を常に把握し、維持管理しておかなければならない.

現在、目視点検は行なわれているものの、一度に多くの対象物を目視しながら実施するため、その結果は個人の技量に依存し定量的評価であるとは言い難い.一方、路面性状検査車による点検は高精度であるものの、運用費が非常に高くデータ処理が自動化されていないため、道路管理者のもとに調査結果が届くまでに時間がかかってしまう.

 このような現状を打開するため、本研究では高速道路を巡回する日常点検車に加速度計および位置同定のためのGPSを搭載し、その計測結果から高速道路の路面状態や伸縮装置の状態を加速度計によりリアルタイムでモニターし、劣化度を定量的に把握する道路高速診断システムVehicle Intelligent Monitoring System(VIMS)を開発した(図-1).VIMSは、通常業務に支障をきたさずに高頻度かつ継続的に監視することができる移動モニタリングシステムである(図-2).安価でありながらも日常点検の点検精度を高めるとともに、高精度点検が可能となり高速道路における事故を未然に防ぐことに役立つと考えられる.更に、路面や伸縮装置の状態を数値的に示すことができるため、保全技術の効果を定量的な形で示すことができる点も意義が高い。従来の車上目視点検にV IMSを組み入れることで、従来の点検とほぼ同じコストで、定量的な舗装・伸縮装置の診断を実施することが可能となる.VIMSは、平成17年度国土交通省建設技術研究開発助成制度による研究を経て、全国の道路へ適用するために開発された技術である.現在、首都高速道路(株)、(財)首都高速道路技術センターにご協力頂き、首都高速道路をフィールドに実用化にむけた試験運用を実施している。